解毒される日常

遠くの星から眺める

僕が死んだ時はMissing lingを流してほしい

凛として時雨のライブに行ってきました。

以前僕がほざいていたこととして「ライブとかコンサートの感想を風景とかのイメージに置き換えるのってアリなのだろうか」というものがあったけど、人それぞれ自分の掴みやすいイメージってあると思うしどう思うのかは自由だろ!って今さらながら思い立ちました、前言撤回します。ただ僕が当時気になったのは、そういう個人個人の個別具体的なイメージを全体に敷衍させて語ろうとする気配であって、どう感じるのかは自由ってことですね。保身に走るあまり、他ならぬ自分自身が議論をいたずらに一般化しようとして、けっか気持ち悪い感じになってしまった。いやー自分ホントにくだらないわ。こういうことって自分のメンタルが弱っている時に個人的には顕著なんだけど、そういうことばかりネットの海に放りなげつづけていたら最後、いつかその向こう側からとんでもないしっぺ返しを喰らうのだろうと思う。ただ、なんとなく普段から思っていることとして、自分は穏やかなものを好みはするけどその中に安住していると自分というものがどんどん腐敗していくような感覚に襲われて、そこから翻ってもっと残酷で鋭いものを求めがちなのかもしれない。そういう意味で、akira kosemuraと凛として時雨は、完全に僕のなかでダブルスタンダードなのだと思う。
なんでこんなことを考えたのかといえば、それはまさしく今回の時雨のライブで「赤」と「青」を感じたからに他ならない。前からこの二つのイメージは自分の中にあったのだけど今回の”hyper secret GIG”でなんとなく考えがまとまった。じっさい歌詞のなかに「赤」というワードが入った曲が間々あるが、僕が「赤」だなあと思う曲はどこか内省的で感情の吐露を感じさせるし、いわば「人の熱量」があるように思う。もちろん先述の通り、この「赤」という言葉は人によっては「血」かもしれないし「夕焼け」かもしれない。“傍観”とか“Sergio Echigo”とかにその気配がある。今日聴いた"Missing ling"もまさにそれで、特にこの曲が今回のライブの最後に演奏されるのはとても印象的だった。
というのも、今回のライブは時雨のベストアルバムに伴って行われたもので、いわば「これまでのまとめ」ということになるのだけど、それを締めくくる曲はこんな歌詞なんだよ。

いつかはこの声も連れ去られて
誰かを満たせる夢が終わるのさ
続きはあの場所と僕の中に
the endless・・・

これまでの総集編・振り返りという意味合いが強い(と思う)今回のライブで自分たちの終わりを感じさせる曲を歌うのは、やはり凛として時雨のなかにそういう気配があるからなのだろうか。確かに音楽活動が永遠に続くなんてことは無いし、どのバンド・アーティストもどこかで終わりが来る。それは分かっているのだけれど、どうしてもその終わりを感じるところにどうしようもなく美しさが宿っている気がするんですよね。「無常観」と言い包めてしまえばそれまでだが、それ以上の、美しいものに漂う「死」のにおいがあの曲と演奏にはあったように思う。
一方で、「青」を感じる曲というのは、外に向かって開かれているとともに、どこか残酷で触れたら凍傷でもするかのようなナイフの鋭さと冷たさがある。こないだ書店で見た音楽雑誌に時雨の記事があったのだけどTKが「abnormalize以降くらいから世界像の広い曲を書くようになった」みたいなことを言ってて妙に納得してしまった。サイコパスでタイアップされた曲はどれも無機質な感じがしてそれがアニメとマッチしていて非常によかった。たぶん“O.F.T.”くらいからその原型とか世界観ってあったのかなと思っているんだけど、直近のアルバム(i' mperfect)で顕著だったのは、その「青」を感じさせる曲がその手法においてどれも洗練されてきているなってこと。あくまでも個人的な直観だけど。
音楽であれ何であれ、少なくとも表現においてなにか逸脱したものが含まれていないと、やがて滅んでいくような気がするんですよね。新しさをむやみに求めるという意味ではもちろんないのだけれど、既存のフレームワークから逸脱しようとする精神が感じ取れないと表現として終わりを迎えているような。でも”Enigmatic Feeling”とかイントロのリフからもうすでに何か始まってたし、あまりそういう意味で心配はしていないです。その記事でも「まだ伝えきれない・表現しきれていないものがあって、まだまだ苦しんでいる」みたいな事が書かれていたし。
ベストアルバムにインディーズのころの音源(#3)が収録されていたけど、そのころはまだTKの声も安定していなくて演奏もどこかぎこちない。そこから現在の楽曲はほとんど想像できない。素直にすごいなと思ったし、とてつもない進化を経てきたのだなということを感じさせる。今回のライブでこれからの活動がもっと楽しみになったとともに、その終わりが来るとき、彼らはいったいどんな「赤」を見せてくれるのだろうと、そう思わずにはいられなかった(以下セットリスト)。

  1. who what who what
  2. I was music
  3. DISCO FLIGHT
  4. 鮮やかな殺人
  5. Enigmatic Feeling
  6. abnormalize
  7. ラストダンスレボリューション
  8. Telecastic fake show
  9. nakano kill you
  10. Missing ling